経皮的冠動脈形成術後の再狭窄予防法を開発することを目的として、その主原因の一つである内膜肥厚における結合織増生の分子機序を解明するため、ラットの総頚動脈に対するballoon denudation後の新生内膜肥厚形成時の結合織増生に影響を及ぼす因子の動態、相互関連について検討し以下のような結果を得た。 1)ラット左総頚動脈に対するballoon denudation後の新生内膜肥厚形成の経時的変化を検討した。新生内膜肥厚は約5日目後より形成され、その程度は8週後にプラトーに達する。約2週までは主に平滑筋細胞の増殖が主体で、その後は結合織の増生が主体となる。 2)結合織増生に関連する因子と報告されているanglotensin II、transforming growth factor β(TGF-β)、またTGF-βの活性化を引き起こす因子、tissue plasminogen activator(tPA)に対するそれぞれの抗体を用いて、免疫組織染色を行った。新生内膜肥厚部において、angiotensin IIは傷害5日後より染色性の増強が認められ、2週目ごろまで持続しその後次第に減弱した。tPAは傷害後1週より染色性の増強が認められ、その後持続した。TGF-βは約2週目ごろより染色性の増強が認められ、その後もしばらく持続した。TGF-βとtPAの遺伝子発現に関しては現在検討中である。 3)以上の結果より、新生内膜肥厚部の結合織増勢生の機序は、まずangiotensin IIの活性化が起こり、これによりTGF-β等の各種因子の遺伝子発現が増強し、その後tPAの発現増強が続く。その後TGF-βの発現が増強することより、in vivoモデルにおいてもtPAがTGF-βの活性化に関与している可能性が示唆される。
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