研究概要 |
心筋梗塞域同定の方法として汎用されているtriphenyltetrazolium chloride(TTC)染色を用いて梗塞サイズを測定すると、反復虚血によりHSP72の誘導をおこなった心筋では30分冠動脈閉塞による心筋梗塞サイズが縮小する結果が得られたが、gold standardであるhematoxylin-eosin染色による組織診断では、心筋梗塞サイズに影響がみられなかった。従って、HSP72の誘導はanti-oxidantへの影響を介して、壊死心筋からのdehydrogenaseやNADHの喪失を抑制する結果TTC染色のsensitivityを低下させて見かけの梗塞抑制をもたらすと考えらえれた。 そこで、HSP72の関連を注目したadenosine A1 receptor刺激とATP感受性Kチャネル(KATP)による虚血心筋保護の機序を解明すべく、A1 receptor刺激がprotein kinase C(PKC)を介してmitochondrial KATP(mitoKATP)を開口することが虚血心筋壊死を抑制するとの可能性と検討した。家兎の摘出灌流心標本を用いて、30分のglobal ischemia-2時間再灌流により心筋梗塞を作成した。A1 receptor agonistであるR-phenyliosopropyladenosine(R-PIA,1 microM)を虚血前10分間灌流することにより、心筋梗塞サイズは無処置対照群の約25%に抑制された。この効果はmitoKATP開口薬であるdiazoxide(100 microM)にmimicされた。R-PIA、diazoxideいずれの効果もmitoKATP阻害薬である-5-hydroxydecanoateにより遮断されたが、PKC阻害薬であるcalphostin C(200nM)はR-PIAの心筋保護効果を完全に遮断したが、diazoxideのそれには全く影響を与えなかった。以上の結果よりA1 receptor刺激がPKCの活性化を介してmitoKATPを開口させることが虚血心筋耐性の増強に重要であることが示唆された。
|