研究概要 |
[目的]昨年度に引き続きACE遺伝子多型と体液性因子および心肥大との関係を検討したが、本年度は症例数を増やすとともに、BNPについても検討した。[対象と方法]心臓カテーテル施行例において、EF≧50%、かつ右房圧≦8mmHgの心機能正常と判断した149例を対象とした。末梢血白血球より抽出したゲノムDNAを用いてACE遺伝子型(II,ID,DD)を決定した。早朝空腹安静臥位の状態で採血し、血漿レニン活性(PRA)、血漿アンジオテンシンII、ANP、およびBNP濃度(PAI,PANP,PBNP)、ならびに血清ACE活性を測定した。左室心筋重量係数(LVMI)を心エコーにて計測した。[結果]ACE遺伝子型はII型68例、ID型67例、DD型14例であり、各群で年齢、男女比に差はなかった。EF、心係数、平均動脈圧、右房圧も各群で差を認めなかった。PRA、PAIIも3群で差がなかったが、Dalleleを持つ2群ではII群より血清ACE活性は有意の高値を示した(P<0.05)。PANPはDalleleを持つ2群(ID;26±2pg/ml、DD;21±3)でII群(38±5)より有意の低値を示した(P<0.05 vs II)。PBNPはDD群(29±7pg/ml)で低値ではあったが他の2群(II群;50±7、ID群;46±7)と有意の差はなかった。LVMIはDD群(165±7g/m^2)において他の2群(II;135±5、ID;137±6)より有意に高値であった(p<0.05)。[考察]ACE遺伝子多型が循環器疾患のリスタに関与する可能性が指摘されている。心機能が正常と思われる症例においてACE遺伝子多型とANP,BNPおよぼ植性の軟骨肉腫細胞や卵巣摘出動物等の実験動物を使用して,組織細胞化学的,分子生物学的な検討を行ってゆきたい。
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