内分泌器官である下垂体には非常に多くの洞様血管が存在し、分泌されたホルモンを標的器官に運んでいる。そのためには下垂体前葉細胞が既知のホルモンだけでなく血管新生を促進する未知の因子を分泌している可能性が高い。 牛肺動脈内皮細胞は成長培地[Ham's F12:DMEM(1:1)]のみによる培養では単層培養細胞として増殖し、contact inhibitionを有している。牛下垂体粗抽出物(プレホルモン、シオノギ製薬)を1.0 RU/mlになるように添加した成長培地で内皮細胞を培養すると、2日後に毛細血管様のtubeが形成され、その一部は網状構造を呈していた。 以上の結果は、下垂体前葉から血管新生因子が分泌されることを示唆している。また、免疫組織化学的観察でlaminin抗体を用いたのは、lamininが血管内皮細胞の基底膜の構成成分の1つで、内皮細胞の極性が見られるためであり、本実験ではtube formationの際lamininの局在から内皮細胞の極性がapicalとbasalとで逆転しているように思われた。したがって血管新生に関係する因子は1つではないと考えられ、今後fibroblastと内皮細胞との混合培養を行い、tube formationをlaminin抗体を用いて観察しfibroblastが産生する因子が内皮細胞の極性を極める可能性があるか否かも研究していくつもりである。さらに、平成9年度ではこの未知の因子を精製・同定し、遺伝子配列を決定したいと考えている。
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