研究概要 |
癌組織は急速なる発育を可能にするために癌細胞が血管新生因子(TAF)を産生し、それによってhostから多数の血管を呼び込み、酸素と栄養供給をすると考えられ、我々は本実験で卵巣明細胞癌の培養上情によりnon-reducting conditionでMW78,000,reducting conditionでMW82,000のTAFを精製しアミノ酸配列を決定した(来年度発表予定)。次の研究として正常組織からも血管新生因子(AGF)をとることを考えた。内分泌器官はホルモンを分泌するために多くの洞様血管が発達している。これは内分泌細胞からAGFが産生される可能性を示唆する。そこで下垂体前葉に注目してここから産生されるAGFについて研究し以下の知見を得た。 1)ウシ下垂体粗抽出物(プレホルモン、シオノギ製薬)をウシ正常肺動脈内皮由来の単層培養細胞に作用させると網目状の血管様小管を形成する。 2)上記血管様小管を構成する内皮細胞はlamininの免疫染色を指標とすると細胞の極性がapicalとbasalとで逆転していた。 3)ウシ内皮細胞とウシ肺由来の線維芽細胞を混合し、これに下垂体抽出物を作用させると網目状の血管様小管が出来るがこの際、内皮細胞の局性は正常に戻り小管の外側にラミニンが認められた。血管内皮細胞の局性は血管の外側に存在する線維芽細胞が決めている可能性が強く示唆された。 4)成長ホルモンは下垂体粗抽出物の血管新生作用を促進する。 5)培養内皮細胞の網目状血管様小管形成を示標として下垂体粗抽出物の各分画を調べると血管新生因子の分子量は75,000〜85,000の間にあることが判明した。現在この新しい血管新生因子のアミノ酸配列を決定中である。
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