研究概要 |
研究目的:心筋細胞内Ca^<2+>([Ca^<2+>]i)の調節には種々のイオン調節機構が存在するが、これらの調節機構の相互の関連性については不明な点が多い。これまで単離心筋細胞による無酸素・再酸素化モデルにおいてCa^<2+> overloadとATP感受性Kチャンネル(KATPチャンネル)の関係をみてきたが、今回は[Ca^<2+>]iの調節におけるK_<ATP>チャネルおよびNa^+/Ca^<2+>交換系の役割・関連性を実験的虚血再灌流モデルを用いて検討する。 方法:1.Na^+/Ca^<2+>交換系に対する低酸素の影響 モルモット摘出心より酵素法にて単離左室心筋細胞浮遊液を作成した。[Ca^<2+>]iの測定は、指示薬として5μM Furaー2を細胞に負荷、340nm/380nmのUV光により励起させ、500nmの蛍光強度比を光電子増倍管によってモニターした。細胞はTyrode溶液にて灌流し、低酸素はグルコース無添加のTyrode溶液にNa_2S_2O_4を加えて誘発した。Na^+/Ca^<2+>交換系の活性は、灌流液をNa^+-free溶液に交換し細胞内Ca^<2+>流入によるfuraー2シグナルの上昇を観察することによって評価した。 2.[Ca^<2+>]i,細胞内pHに対する虚血再灌流の影響 ラット摘出心をLangendorff法にて灌流し、蛍光指示薬Furaー2またはBCECFを経冠動脈的に心筋に負荷し、細胞内Ca^<2+>,pHを測定した。Low-flowによる虚血と再灌流を行い、細胞内イオン動態を観察、単離心筋細胞モデルと対比した。 結果・結論 1.単離心筋細胞において、低酸素によりNa^+/Ca^<2+>交換系活性は抑制され、resting [Ca^<2+>]iの上昇がみられた。 2.摘出心灌流モデルにおいて、虚血によりCa^<2+> transientの振幅の低下と、拡張期[Ca^<2+>]iの上昇がみられた。また細胞内pHは経時的に低下し、単離心筋細胞を用いた無酸素・再酸素化モデルの結果に類似した。 Na^+/Ca^<2+>交換系阻害薬は虚血時の拡張期[Ca^<2+>]iの上昇を抑制する傾向がみられ、さらにK_<ATP>チャネル開口薬の効果を検討中である。
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