1979〜1996年に非化膿性合併症、敗血症やtoxic shock-like syndrome(TSLS)などの重症感染症患者から分離されたM1型A群溶連菌28株および合併症のない咽頭・肩桃炎患者から分離された同菌67株の合計95株についてパルスフィールド電気泳動法によりそのゲノムプロファイルを調べた。 1979〜1991年に非化膿性合併症、敗血症患者から分離された10株中8株のゲノムプロファイルは同一で、さらにこれは同時期に合併症のない咽頭・扁桃炎患者から分離された同菌48株中35株のゲノムプロファイルと同じであった。一方1992〜1996年にTSL-Sなどの劇症・重症感染症患者から分離されたM1型溶連菌18株のゲノムプロファイルはすべて同一で、同時期に咽頭・扁桃炎患者から分離された19株中18株のプロファイルと同じであった。すなわち1991年以前と1992年以降において分離されたM1型A群溶連菌のゲノムプロファイルは疾患に関わらずそれぞれ同じであった。しかし1992年以降に分離された株のゲノムプロファイルは1991年以前に分離されたプロファイルと全く異なるものであった。 1992年以降わが国において増加してきたTSLS患者から分離されたA群溶連菌の多くはM1型であり、この時期に一致したこの血清型のA群溶連菌のゲノム変化あるいは新しいクローン株の出現とその広がりは日本におけるこうした疾患の増加に関連している可能性がある。
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