巨核球の分化成熟に、NF-E2転写因子群がどのような役割を果たしているかを明らかにする目的で、以下の点に重点を絞り実験を行った。 1.正常のCD34陽性細胞をトロンボポイエチンで巨核球に分化成熟させた時、NF-E2転写因子群が、どのような発現パターンを示すかを、RT-PCRを用いて検索した。その結果、NF-E2転写因子のの大サブユニットp45NF-E2mRNA及びその関連蛋白Nrf1とNrf2は、巨核球への分化に伴い、発現が、経時的に増強した。さらに、未分化な造血幹細胞の単クローン性増殖性疾患であるCMLの細胞を同様の液体培養液で巨核球系に分化成熟させ、NF-E2転写因子の小サブユニットであるmafK及びmafGの発現を観察した。その結果、巨核球分化に伴い両者の発現増強が見られたが、特にmafGの発現増強が著明であった。以上の結果より、p45ばかりではなく、その関連蛋白も小Maf蛋白とヘテロニ量体を形成し、巨核球の分化成熟に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 2.次に、p45NF-E2の関連蛋白Nrf1とNrf2が、実際に小Maf蛋白とヘテロニ量体を形成し、NF-E2配列に結合するかどうかを、解析した。この目的のために、p45NF-E2、Nrf1、Nrf2、MafK及びMafGをコードするcDNAを、pQEヴェクターに組み込み、大腸菌にこれらの組み替え蛋白を発現させ、蛋白を精製した。これらの蛋白を用いて、ゲルシフト法でDNA結合能を解析した。その結果、p45NF-E2ばかりではなく、Nrf1とNrf2も、小Maf蛋白とヘテロニ量体を形成し、NF-E2配列に特異的に結合することが明かとなった。
|