はじめに:腎性糖尿は腎尿細管におけるグルコースの転送障害が示唆されているが、その本態は不明である。我々は尿中に培養可能な尿細管上皮細胞が多数落下することを見い出し既に報告している。今回この尿中落下細胞を用いてグルコースのトランスポーターであるNa^+/グルコーストランスポーター(SGLT)2遺伝子を解析し、腎性糖尿との関連を検討した。 方法:尿は無菌的に採取、遠心後I型コラーゲンをコートしたシャーレに播き、培地にはDulbecco's MEM/Ham'sF12(1:1)を用い、FCS、インスリン、トランスフェリン、セレン酸ナトリウム、デキサメサゾン、サイロキシンを添加した。SGLT2遺伝子の解析に当たっては、培養細胞、各種組織よりmRNAを抽出、cDNA作成後全翻訳領域をPCR法にて増幅し直接シークエンス法にて塩基配列を決定した。PCRプライマーはWellsらの報告に従い合成した。 結果:抽出したmRNAを用いてcDNAを作成し、PCR法にてSGLT2遺伝子の発現を検討したところ、腎臓組織ではPCR産物が検出されたが、尿細管培養細胞を含め他の組織ではPCR産物は得られなかった。次にnested PCR法を用いて検討したところ、培養尿細管細胞、線維芽細胞、小腸でPCR産物が得られたが、肝臓、白血球、リンパ芽球ではPCR産物は得られなかった。現在、培養尿細管細胞由来のcDNAを鋳型としたnested PCR産物を用いてシークエンスを行ない、SGLT2遺伝子の変異を検索中である。 考察:各臓器におけるSGLT2遺伝子の発現を確かめたが末梢白血球、リンパ芽球ではnested PCRでも増殖されず、試料として不適当であった。この点、非侵襲的に得られる培養尿細管細胞はSGLT2遺伝子の解析に、非常に有用であることが確認された。現在PCR産物の塩基配列を直接シークエンス法にて決定しSGLT2遺伝子を検索中であるが、まだ変異は同定されていない。
|