研究概要 |
ミトコンドリア病はミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異にて起こるが、その変異は通常正常と異常が混在するヘテロプラスミ-をとる。MELASはA3243G変異が80%を占め、MERRFはA8344G変異、Leigh脳症の一部にT8993G変異を共通に認める。ミトコンドリア病は難病でその治療は困難であるが、治療を考える場合ヘテロプラスミ-の病態を解明しなければならない。治療モデルin vitroで検討するためには、これらの変異mtDNAの割合が安定した細胞を樹立する必要がある。mtDNAの変異をもつ症例の培養線維芽細胞に複製開始部欠損SV40DNAをリポフェクチン処理して導入し、クローン化後形質が安定した細胞を得た。ミトコンドリアの変異の割合をPCRを用いて検討した結果変異率は35%から67%までの細胞が得られた。さらにmtDNA点変異のある培養線維芽細胞をサイトカラシンB処理後遠心し脱核したサイトプラストとエチジュウムブロマイド処理でmtDNAを完全に除去したHeLa細胞(ρ0細胞)をポリエチレングリコールで細胞融合させて樹立した細胞(サイブリッド)を作成した。今後これらの細胞を低酸素(10%),定常酸素(20%)、高酸素(30%)にて培養を続け、経時的に細胞を採取し,PCRを用いてmtDNAの変異率を求める。同様にグルコース濃度を0%、0.01%、0.05%、0.1%(定常)、0.2%、0.5%とした培地で培養を続け、経時的に細胞を採取し、PCRを用いてmtDNAの変異率を求る。これらの実験では、変異mtDNAの割合が一定したライン化細胞を用いるが、その均一性については、マニュプレターによって細胞一個を選別し、細胞毎のPCRを行うことによって検討する。また変異率の推移は、細胞全体として検索するのみではなく、細胞一個毎のPCRの結果の総和を平均して求める。後半は次年度に行う予定である。
|