研究概要 |
平成8年度の研究においては以下のことが明らかとなった。 1.神経芽細胞腫細胞株N-KASはトランスウェル培養器を用いて問質細胞株を共存させた条件下では、培養開始後3週間目まではN-KAS細胞の増殖が認められたが、それ以後の増殖には問質細胞との接着が必要であった。 2.N-KAS細胞培養系に各種増殖因子(G-CSF,GM-CSF,M-CSF,SCF,EPO,IL-1 β,IL-2,IL-3,IL-4,IL-6,IL-7,NGF)を添加したが、いずれの場合に於いてもN-KAS細胞の増殖は支持されなかった。 3.各種細胞外マトリックスをコーティングした培養器を用いた実験では、コラーゲン(タイプIV)、ラミニンをコーティングした場合に於いてのみN-KAS細胞の接着と増殖が認められ、フィブロネクチン、コラーゲン(タイプI)、ゼラチンは無効であった。一方β1インテグリンに対する単クローン抗体をコーティングした場合に於いても同様にN-KAS細胞の接着と増殖が認められた。 以上の結果よりβ1インテグリンは神経芽細胞腫細胞株N-KASの増殖を調節する細胞接着因子の一つであり、そのリガンドとしてはコラーゲン(タイプIV)及びラミニンが有力な候補者であることが示唆された。 以上の結果を踏まえた上で、今後はβ1インテグリンを介したシグナルがどのような伝達経路を経て細胞増殖という効果をもたらすのか、さらにはどのようなシグナル伝達分子を介してアポトーシスを抑制する方向に作用するのかについて解析する。 またインターフェロンαによるN-KAS細胞のアポトーシス誘導機構について解明し、その成果を基にインターフェロン療法を含めた神経芽細胞腫に対する治療の可能性を探る。
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