小児急性リンパ性白血病における癌抑制遺伝子の研究とその解析への応用

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08670857
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 渋谷 和彦 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80206151)
• 研究分担者: 磯田 貴義 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80272574) ; 小林 美由紀 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (60205391) ; 林 泰秀 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (30238133) ; 柳澤 正義 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (90049031)
• キーワード: 急性リンパ性白血癌 / 癌抑制遺伝子 / P16遺伝子 / P15遺伝子 / FHIT遺伝子 / FLT3遺伝子 / DCC遺伝子 / メチル化

研究概要

今年度は、これまでに集積した細胞株40株を含む小児ALLの140検体を用いて、まず腎癌の3p14.2領域から単離されたFHIT遺伝子とFLT3遺伝子の検討を行った。サザン解析でhomozygous deletionの有無を検討したが、再構成バンドを含め異常ははみられなかった。さらにFHIT遣伝子のexon上に設定したプライマーで検体のcDNAをRT-PCRで増幅したところ、多数の異常バンドを検出した。これらをシークエンスをしたところ、alternative splicingによると思われる発現の異常が多数例に認められた。ウエスタンブロッティングにて発現の再検討を行っているところである。FLT3遺伝子の発現は約60%の細胞株でみられたが、AMLでみられるtandem duplicationの異常はみられなかった。さらにmethylation-sensitiveな制限酵素を用いてこれらの遺伝子のhomozygous deletionのない細胞株と新鮮ALLの多数例でp16/MTS1遺伝子とp15/MTS2遺伝子のmethylationの検討を行い、p16/MTS1のみならずp15/MTS2遺伝子でも複数例でmethylationがみられた。FHITとFLT3遺伝子の異常およびp16/MTS1遺伝子とp15/MTS2遺伝子のmethylationをもつ症例ともたない症例の間の臨床像の相違を検討しているところである。DCC遺伝子についてもRT-PCR法を用いて発現の検討をしている。

研究成果

• [文献書誌] Takita J, et al.: "Deletion map of chromosome 9 and p16(CDKN2A)gene alterations in neuroblastoma." Cancer Research. 57. 907-912 (1997)
• [文献書誌] Kong X-T., et al.: "Consistent detection of TLS/FUS-ERG chimeric transcripts in acute myeloid leukemia with t(16;21)(p11;q22)and identification of a novel transcript." Blood. 89. 1192-1199 (1997)
• [文献書誌] Yamamoto K, et al.: "Natural history of neuroblastoma found by mass screening." Lancet. 349. 1102 (1997)
• [文献書誌] Kong X-T, et al.: "Expression and mutational analysis of the DCC,DPC4,and MADR2/JV18-1 genesin neuroblastoma." Cancer Research. 57. 3772-3778 (1997)
• [文献書誌] Taki T, et al.: "The t(11;16)(q23;p13)translocation in myelodysplastic syndrome fuses the MLL gene to the CBP gene." Blood. 89. 3945-3950 (1997)
• [文献書誌] Ida K, et al.: "Adenoviral E1A-associated protein p300 is involved in acute myeloid leukemia with t(11;22)(q23;q13)" Blood. 12. 4699-4704 (1997)