研究概要 |
p16/MTS1/CDKN2遺伝子は多数の癌でホモ接合体欠失(homozygous deletion,HD)が報告され注目されている。小児小児急性リンパ性白血病(ALL)におけるp16,p15,FHIT,FLT3,DCC遺伝子を検討した。p16遺伝子は、T-ALLでは、新鮮白血病56例中26例(46%)、細胞株17株中12株(71%)に異常がみられ、このうちHDはそれぞれ22例(39%)、10株(59%)にみられた。B前駆型-ALLでは、初診時45例中11例(24%)、再発時22例中5例(23%)、細胞株15株中11株(74%)でHDを認めた。p16遺伝子はT-ALLとB前駆型ALLの発症と進展に何らかの役割を担っているものと思われた。さらに、B-前駆型ALLの中ではt(1;19)-ALLはHDがみられず、Burkitt′s lymphomaとALL-L3でもp16遺伝子の異常の頻度は低いと報告されているため、これらの細胞株から蛋白を抽出し、ウェスタンブロッティングでp16遺伝子の発現を検討した。Burkitt′s-L3ではHDは7株中2株であったが、発現は11株中9株(81%)でみられなかった。HDがみられなかったt(1:19)-ALL2株中1株で発現の消失がみられた.またFHIT遺伝子とFLT3遺伝子の検討では、サザン解折で異常ははみられなかった。FHIT遺伝子はRT-PCRでは多数の異常バンドを検出し、これらをシークエンスをしたところ、alternative splicingによると思われる発現の異常が多数例に認められた。FLT3遺伝子の発現は約60%の細胞株でみられたが、AMLでみられるtandem duplicationの異常はみられなかった。さらにmethylation-sensitiveな制限酵素を用いてpl6/MTS1遺伝子とp15/MTS2遺伝子のmethylationの検討を行い、p16のみならずp15/MTS2遺伝子でも複数例でmethylationがみられた。DCC遺伝子についてもRT-PCR法を用いて発現の検討をしている。
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