研究概要 |
1.対象:鈴木の診断基準を満たす特発性尿細管性蛋白尿症の患者8家系を対象とした。正常女性50名をコントロールとした。 2.方法:患者、その母親、兄弟とコントロールの末梢血から白血球を採取し、genomic DNAを抽出した。8家系の患者のCLCN5遺伝子のすべてのエクソンをPCR法にて増幅し、DNAシークエンスを行った。異常の見られたエクソンについては患者の母親、兄弟、コントロールについて同様の方去でDNAを増幅した。 3.結果(1)8家系中6家系にそれぞれ異なるCLCN5遺伝子の異常を認めた。異常の内訳はNonsense mutation2種類(codon279TGG→TGA,347CGA→TGA)、Missense mutation2種類(codon 513GGG→GAG,516CGG→TGG)、Frameshift mutation 1種類(codon 695のCdeletion)、CLCN5遺伝子全体に及ぶdeletionであった。codon279のNonsense mutationは英国人のDent病患者と昨年度に報告した4家系中の1家系の変異と同一であった。これら6種類の変異は正常コントロールには見られない変異であった。 (2)制限酵素あるいは変異に相補的なoligoDNA probeを用いた解析により、患者の母親にも患者と同一の変異を確認した。 4.考察:昨年度の報告で私どもはX染色体性の遺伝形式が推定される特発性尿細管性蛋白尿症はDent病と同一の疾患であることを報告した。今回の検討で、2名の患者に検索した範囲内ではCLCN5遺伝子の異常を同定することができなかった。この事実は本症の一部がCLCN5遺伝子の異常によらない可能性を示唆する。 5.今後の方法:より多数例の本症患者の解析を通じて、本症におけるCLCN5遺伝子異常の頻度を明らかにする。
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