研究概要 |
本年度は新たな特発性尿細管性蛋白尿症患者においてクロライドイチャネル5遺伝子(CLCN5)の異常の有無を解明し、患児の母親の尿中β2-microglobulin(β2-m)値が本症のCLCN5の異常の予測となりうるかを目的とした。鈴木の暫定的診断基準を満たす6家系の患者のCLCN5を従来の方法で解析した。さらに、これまでに検索した30家系のCLCN5異常の有無と母親の尿中β2-m値との関係を比較検討した。 その結果、6家系全員のCLCN5に変異を認めた。変異はNonsense mutation(codon704CGA→TGA)、Missense mutation(codon516 CGG→TGG、706CTG→CCG)、Frameshift mutation(T deletion at exon 64,A insertion at exon 100)、Splice site mutation(intron 10 gtaagg→gttggtaagg)であった。患児の母親にも同一の変異が認められた。母親の早朝尿β2-mが240μg/L以上の本症患児24例中20例(83.3%)に、母親の尿中β2-mが正常の本症患児6例中1例(16.7%)にCLCN5異常が証明された。両群間に0.5%以下の危険率で統計学的有意差が認められた。 R704XとR516Wはすでに私どもが以前に報告したCLCN5の変異と同一で、codon516と704はCLCN5におけるmutational hot spotsと推定された。特発性尿細管性蛋白尿症は臨床遺伝学的にも単一疾患でなく、母親の早朝尿β2-m値は複数の病因が推定される本症においてCLCN5異常の存在を推定する上で有用な指標であると結論した。
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