研究概要 |
Chloride channel 5蛋白(CLC5)は近位尿細管の細胞質とlysosome膜に強く発現しlysosome膜内部のpH低値を維持する上で重要な働きをすると推定されるがその機能には不明な点が多い。私どもは本症とDent病の臨床的類似性を初めて指摘し、本症の29家系の内21家系(72%)に18種類のchloride channel 5 gene(CLCN5)の異常を明らかにした。5家系に認められた3種類のnonsense変異(W279X,R648X,R704X)はDent病やX染色体劣性腎結石症と同一の変異であった。7家系(33%)の変異はexon8に、4家系(19%)の変異はexon 11に生じていた。さらに、missense変異によりアミノ酸が一つ変化した4種類の異常CLC5蛋白(S290R,L278F,R280P,L706P)をツメガエル卵に発現させ、chloride currentがそれぞれ正常の約30%,0%,30%,80%に低下することを明らかにした。CLC5蛋白のdomain5と6を結合する細胞内ループ(14アミノ酸より構成)上に変異を有する3つの異常CLC5蛋白(S270R,L278R,R280P)の存在から、この細胞内ループはCLC5蛋白の機能を調節する役割を有することが示唆された。また、CLC5蛋白のC末端より41個目のアミノ酸が変異したL706P蛋白は発現実験では正常の約80%のchloride currentを有していたが、Western blotではL706P蛋白のかなりの量が細胞内に停滞していた。この事実からCLC5蛋白のC末端部のアミノ酸は同蛋白の細胞質方膜への移動の際に機能することが示唆された。統計学的解析により、1)患者の尿β2-microglobulin、尿Ca/Crは共に保因者、正常人よりも有意に高値である、2)CLCN5のmissense変異を持つ患者とそれ以外の変異を持つ患者とでは尿β2-microglobulinには差が見られなかったが、尿Ca/Crはmissense変異を持つ患者で低値である、3)missense変異を持つ患者の腎石灰化合併率はそれ以外の変異を持つ患者よりも低値であることが明らかとなった。
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