ヒトアレルギー疾患においてマスト細胞は中心的な役割を果たしている。表面上に発現したFcεRIにIgEおよび抗原が架橋すると、マスト細胞は活性化され、ヒスタミンや化学伝達物質を放出し、I型のアレルギー反応を引き起こす。さらに、活性化マスト細胞は、各種のサイトカインを産生し遅延型のアレルギー反応にも関与していること、CD40リガンドを発現しB細胞のIgE産生をも誘導していることが明らかになってきている。従って、マスト細胞の活性化機構を明らかにすることは、アレルギー疾患の治療に直接的な意義を持つ。これまでに我々は、ヒトマスト細胞の長期純培養法を行い、その活性化機構を検討してきた。この培養マスト細胞は、SCF+IL-6存在下にCD34^+細胞から分化してくるが、FcεRIの発現はほとんど見られず、FcεRIの発現には、何らかの別の因子が必要であると考えられてきた。 今回の研究で、我々は、IL-4がマスト細胞のFcεRI発現誘導を引き起こすことを明らかにした。このことは、今まで、知られているIL-4のB細胞のIgE産生誘導作用とあわせて考えると、IL-4はB細胞、マスト細胞両者に働き、IgEを介したアレルギー反応を、up-regulateしていることを示している。さらに、IL-4はマスト細胞の増殖、凝集、接着因子発現誘導をも引き起こすことも見出した。こうしたことから、IL-4マスト細胞の活性化において、重要な役割を果たしていることが考えられる。 今後、IL-4によるマスト細胞活性化調節機構を明かにし、IL-4シグナルを特異的に阻害すること、特に、FcεRI発現をマスト細胞特異的に阻害することにより、アレルギー治療へ発展させる予定である。
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