平成8年度までに、協力の得られた産院にて、親の同意の得られた日令2以上の新生児および福井医大小児科を健診で受診した4ヶ月までの健康な乳児の計約4000人の尿路を観察した。超音波検査により、排尿時腎盂の一時的な拡張(ballooning)を19人に、small kidneyを8人に(両側性1人)、腎盂内径の10mm以上の拡張を5人に、水腎水尿管を4人に、重複腎盂を9人に認めた。排尿時膀胱尿道造影検査を23人に行い、膀胱尿管逆流(VUR)を19人(うち両側性9人)に認めた。また、small kidneyの8人にDMSA腎シンチを行い、6人は低形成腎(両側性1人)、2人は異形成腎と診断された。また、スクリーニング検査で異常を認めなかった児のうち12人が尿路感染症と診断され、うち2人はVURを有し、このうち1人は低形成腎と診断された。低形成腎の7人はいずれも男児であり、VURを有していた。先天性腎尿路異常の中ではVURが最も頻度が高く、とくに男児では低形成腎が1/300人と高頻度で認められ、VURにともなって認められる腎障害の中で大きな役割を占めるものと考えられた。このように、先天性尿路異常のうち、VURの頻度は最も高く、しかも低形成腎では全例にVURが認められた。VURを有していた患者の大多数を排尿時超音波検査を含む尿路のスクリーニングで検出でき、尿路のスクリーニング検査は有用であることが確認された。今後さらに、検討を進め、費用対効果の検討などを行う必要がある。
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