平成9年度は、新生児の尿路の超音波スクリーニングを引き続き行い、計19人(乳児期のスクリーニング例をいれると計21人)において膀胱尿管逆流症を発見した。性別については、男14人、女5人と男児にはるかに多いことが明らかとなった。また、これらの新生児期に発見された膀胱尿管逆流症児の経過を観察しているが、膀胱尿管逆流の診断後に抗性物質の予防投与ないし緊密な経過観察によっていずれも腎孟腎炎を発症することなく順調に経過している。また、腎の生後の発育についても超音波検査などによって観察したところ、先天的な腎の形成異常によるものを除いては、順調に経過していることが判明した。したがって、腎孟腎炎などの尿路感染症を発症する可能性が高く腎障害を生じやすいことが知られている膀胱尿管逆流症において、生後早期に発見すれば腎障害の発生を効果的に防止できることが判明した。 平成10年度は、症例数をさらに増やすとともに、これらの患児の注意深い経過観察を続けて行く。そのうえで、要した費用に対する腎障害の防止効果を検討し、超音波スクリーニングの有効性を客観的に評価し、本研究を総括する。
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