より多数の新生児の排尿時の超音波スクリーニングを行うことによって、排尿時の腎盂の一時的な拡張と、低形成腎を示唆する腎サイズの左右差の存在が、VURに特異的な超音波所見であることを明らかにした。また、VURの発生頻度は約1%という高率であり、男児は女児より約2倍多いことを明らかにした。さらに、先天性腎低形成は、男児300人に1人という高頻度で存在し、いずれもVURを伴っていることを世界で初めて明らかにした。このVURを伴った低形成腎が男児に高頻度に認められることが男児にVURが多いことの一因と考えられた。また、男児に多く認められるVURを伴った矮小腎は、従来はVURに伴って発症した尿路感染症によって後天的に生じるものと考えられていたが、今回の検討結果によりこの矮小腎のほとんどは先天的な低形成腎によるものであることが強く示唆された。小児末期腎不全の年間発生頻度は100万人当たり1.5-7人で、このうち先天性尿路奇形によるものは約半分であり、このほとんどは尿路閉塞(水腎症)ないし高度の腎形成異常(低形成異形成)によるものであることが、近年の検討によって明らかにされた。尿路閉塞や腎形成異常を伴わないVURは、腎機能障害や腎不全にまで至ることはまれであり、費用対効果の点を考えると、腎機能障害を起こしやすい尿路閉塞や腎形成異常の早期発見が有用と思われる。これらの高度の異常は産科医によってルーティーンに行われている母体と胎児の超音波検査時に発見が十分可能であり、産科医による胎児超音波検査を一次スクリーニングとして活用し、異常を疑われた児に対して出生後に精査を行う方がより効率的であると思われた。
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