研究概要 |
本研究では主にムコ多糖症I,II,IVA型について国内外の患者遺伝子変異解析を行い、臨床像との関連性、民族の特性を明らかにするとともに、保因者診断、出生前診断および治療法について検討した。またムコ多糖症IVA型のモデルマウスを作製することを目的として、マウスGALNS cDNAおよびゲノム遺伝子をクローニングした。結果を以下に要約する。 1)日本人ムコ多糖症I型患者19例の遺伝子解析を行ない、日本人に特有なcommon mutation 704ins5を同定した。またR89Q変異が軽症型を規定する変異であることを確認した。 2)日本人ムコ多糖症II型(Hunter病)患者71例を対象として遺伝子解析を行い、25種類の変異を同定した。 3)ムコ多糖症IVA型については、世界20カ国より180症例の検体を集めて遺伝子解析を進め、これまでに90種類以上の変異を同定し、臨床型との関連性を考察した。また先に明らかにしたcommon mutation(日本人におけるdouble gene deletion、欧米人に見られるI113F変異、人種を越えたR386C変異)に加えてコロンビア人におけるG301C変異、Irish/Britishに見られるI113F変異がオーストラリア人においても頻発していることを確認し、患者の遺伝的背景や人類学的背景を検討する上で有用な結果を得た。 4)ムコ多糖症II型(Hunter病)はX染色体劣性遺伝形式をとり、男児に発症する。女児への浸透率は極めて低く、欧米の4例の報告のみであったが、本邦にて2例の女児例を経験した。2例とも母親が保因者であり、父親由来の正常対立遺伝子が偏って不活化されていることを確認した。 5)ムコ多糖症IVA型モデルマウスを作製する目的にて、責任遺伝子であるマウスGALNS遺伝子をクローニングした。全エクソンがカバーされていることを確認し、現在その特性を解析中である。
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