遺伝子性ペルオキシソーム病は先天的なペルオキシソームの欠損に基づく常染色体劣性の代謝異常症で、臨床的には生後早期に死亡するZellweger症候群から成人まで生存する乳児型Refsum病まで多岐にわたる。遺伝的にも複数の相補性群に分類され、CHO細胞や酵母のペルオキシソーム欠損変異細胞を用いていくつかの群で病因遺伝子が解明されている。本研究では国内外の研究施設の協力を得てこの2年間にペルオキシソーム欠損症の成因ならびに発症機構の解明について以下の成果を挙げた。 1.C群の病因であるヒトPAF-2cDNAをクローニングし、日本人患者解析にて1塩基挿入と3種類のexon skippingの変異を同定した。さらにPAF-2遺伝子のゲノム構造を明らかにするとともにヒト染色体上、6p21.1に座位することを明らかにした。 2.欧州各地のペルオキシソーム欠損症患者の線維芽細胞を集積し、新たに2つの相補性群を同定し、ヒトペルオキシソーム欠損症がRhizomelic chondrodysplasia punctataを含めた13群に分類されることを明らかにした。 3.新たにペルオキシソーム欠損CHO変異細胞を分離し、これまでに6つのヒト相補性群と同群のCHO変異細胞の存在を明らかにした。さらにこのCHO変異細胞を用いて2つの群の病因遺伝子(E群と3群)を機能的にクローニングして患者での遺伝子変異部位を明らかにした。 4.軽症型のペルオキシソーム欠損症患者細胞において低温度培養下でペルオキシソーム機能が回復することを明らかにし、遺伝子レベルでも温度感受性変異が存在することを解明し、さらにこの現象が患者の重症度と相関することを明らかにした。
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