研究概要 |
伴性遺伝型重症複合免疫不全症骨髄移植後の抗体産生不全の解析 重症複合免疫不全症(以下SCID)の骨髄移植後長期生存例6例中2例が抗体産生能を回復し得なかったが、これらの患者はともに伴性遺伝型のSCID(XSCID)で移植前からB細胞が存在した。本年度は、SCID骨髄移植後の抗体産生不全の発症機序を解明し、骨髄移植法の改善を図る目的で、骨髄移植後のXSCID患者を対象にB細胞のキメラ状態と抗体産生能につき解析した。 骨髄移植のドナーとのHLA適合度は、抗体産生不全を示す2例で不一致、対照で一致と適合度の差が大きな要因であることが示唆された。末梢血B細胞数は、抗体産生不全患者も正常値を示した。PHAによるリンパ球芽球化能の推移も正常であった。B細胞細胞分画を種々の刺激後10日間培養して免疫グロブリンの産生を誘導したところ、抗体産生不全患者B細胞はSAC、抗CD40抗体、IL-10の共刺激により量的には少ないがIgMは産生し得たが、これらの刺激でもIgG,IgAの産生は見られなかった。 現時点におけるキメリズムをVNTR33.6のDNA多型を用いて解析したところ、抗体産生不全の有無に拘わらずB細胞の90%程度は患者由来のものが残存すると考えられた。また、残存する患者由来B細胞にはγc鎖の異常が存在するはずであるが、抗体産生を回復した症例でもγc鎖がB細胞上に表出していないと考えられ、残存する患者由来B細胞上のγc鎖の機能障害の差が抗体産生の有無に関与するのではないと考えられた。 これらより、患者B細胞は。T細胞の障害など何らかの異常により、in vivtroで抗体産生を誘導できる段階までB細胞が分化、成熟し得ていないか、或いは、in vivoで抑制性のシグナルを受け外来資源に反応し得ない状態に置かれていると考えられた。
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