平成8年度から平成10年度の3年間、急性脳炎の遺伝子診断に関する研究を行い以下の研究成果を得た。 1. 単純ヘルペス脳炎については髄液を用いたPCR法による早期診断が最も優れた診断法であることを明らかにし、現在本法が全国的に普及しつつある。また、このPCR法で確定診断した小児のヘルペス脳炎の臨床像を世界で初めて明らかにした。本症で、しばしば見られる再発が抗ウイルス剤の使用方法と関連することもわかった。 2. 慢性活動性EBウイルス感染症の中でEBウイルスがNK細胞に感染し、高サイト力イン血症を示す例において高頻度に大脳基底核の石灰化が見られることが判明した。これは、従来原因が不明であった同部位の石灰化の原因を生物学的に初めて示したものである。 3. 1997年から1999年にかけ小児において重篤なインフルエンザ脳炎・脳症が高頻度に認められた。この全国調査を行い本症の臨床像を明らかにした。また、神経障害発症の機序として高サイトカイン血症、特にIL-6が病態に強く関連していることを明らかにした。
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