1987年から1997年までに名古屋大学小児科およびその関連施設で診断治療された小児急性リンパ性白血病(ALL)患者50例についてPCR法による微小残存腫瘍(MRD)の検出を行い、その臨床的意義を解析した。t(1;19)、t(9;22)、t(12;21)を認める症例(11例、5例、12例、計28例)は、それぞれE2A-PBX1、BCR-ABL、TEL-AML1融合遺伝子をRT-PCR法で検出した。これらの融合遺伝子を認めない症例については、白血病細胞のCDR-III塩基配列をPCR法で増幅してMRD検出を行った。CDR-III塩基配列を用いたMRDの検出を26例に行った。4例は両方の検出法で解析した。 転座部位の融合遺伝子を標的としたMRD検出では、治療開始後1〜3カ月後のMRDが検索し得た19例中16例がMRD陰性でうち2例が再発した。陽性の3例は全例骨髄再発した。一方、CDR-III塩基配列を用いたMRDの検出でも、寛解後3カ月までにMRDの解析が可能であった23例中MRD陰性の19例からは5例が再発した。一方、MRD陽性3例中3例とも再発していた。これら両方のデータを総合して寛解後3カ月以内のMRD陰性例35例中再発は7例であり、陽性例6例は全例再発しており、予後に有意差を認めた。 今後、症例の集積を重ね、我が国の小児ALLにおけるMRDの意義および治療選択への利用法を確立する予定である。
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