ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素欠損症の患者の遺伝子治療を行うにあって、この酵素遺伝子の転写調節領域がどのような性質を持っているのかを知ることが重要であると考え、遺伝子の上流域の-3190kbまでの塩基配列を決定した。次に、この領域内でプロモーターとして働いている部位を同定する目的で、種々の長さの上流領域をプロモタ-活性測定用のルシフェラーゼをレポーター遺伝子とするベクターに挿入し、肝癌細胞であるHepG2とHuH-7に作成したベクターをトランスフェクトし、その転写活性を比較検討した。その結果、上流領域の-1362から-1220(DE : distal element)と-113から-70(PE : proximal element)の2カ所にプロモーター活性をもつ領域が存在することが明かとなった。PEには塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス型の転写調節因子が結合するE-boxおよび肝臓特異的に遺伝子を発現するためのHNF-1が存在した。DEにはAP-1とCREBの良く似た配列が存在したが、gel mobility-shif assayでは転写因子の結合は証明されなかった。 並行して、本酵素の代謝異常症であるクリグラー・ナジャー症候群とギルバ-ト症候群の患者の遺伝子異常についても将来の遺伝子治療の基礎データとして遺伝子解析を続けている。
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