研究課題/領域番号 |
08670883
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐野 哲也 大阪大学, 医学部, 講師 (60226040)
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研究分担者 |
岡田 伸太郎 大阪大学, 医学部, 教授 (30028609)
澤 芳樹 大阪大学, 医学部, 助手 (00243220)
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キーワード | 肺高血圧症 / 肺血管病変 / 遺伝子導入 / HVJ-リポゾーム法 / エンドセリン |
研究概要 |
【はじめに】肺高血圧症の肺血管病変形成の分子生物学的なメカニズムにおいて、肺血管へのin vivo遺伝子導入法は新しい有力な方法と考えられる。本研究ではHVJ(hemagglutinating virus of Japan)-リポゾーム法を用いて、肺動脈血管壁へのin vivo遺伝子導入が可能か否かと、エンドセリンの強制発現の解析から、肺高血圧におけるエンドセリンの関与を明らかにすることを主たる目的とする。 【方法】HVJ-リポゾーム法は、不活化したHVJの融合能を有する膜蛋白を利用しリポゾームに封入した遺伝子を直接細胞に導入する方法で、組織の炎症が少なく導入効率が高いことが特徴である。6〜8週齢のSDラット(200g〜250g)を開胸下に左肺動脈を表出し、調整したHVJ-リポゾームを左肺動脈に選択的に注入した。遺伝子導入処置後2週間目に肺の病理組織をHE染色ならびに免疫組織化学染色を用いて検討した。遺伝子導入の効果を検討するためにβ-galactosidase(β-gal)geneを、エンドセリンに関してはpreproendothelin-1(ET-1)geneを導入した。 【結果】HVJ-リポゾーム法により1)肺動脈血管壁においてβ-galの強い発現を確認した。2)肺血管壁以外では肺胞上皮やマクロファージの一部にβ-galの発現を認めた。3)ET-1導入実験では肺動脈中膜平滑筋細胞においてET-1の高度発現が認められた。さらに、4)ET-1導入群において対照群(目的遺伝子を含まないHVJ-リポゾーム投与群)に比較し中小肺動脈から細小動脈の中膜平滑筋層の有意な肥厚(% medial wall thickness;70.3±7.7%vs.45.9±7.0%)が認められた。 【まとめ】HVJ-リポゾーム法によりラット肺動脈血管壁へのin vivo遺伝子導入が可能である。本法によるエンドセリンの高度発現により、肺高血圧症の基本的病理変化である中膜肥厚が再現された。in vivo遺伝子導入は肺血管病変の病態解析の有力な手段となり得ることが示唆された。
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