研究概要 |
先天性N-結合型糖鎖欠乏症候群(CDG)症候群は1980年に記載された新しい疾患であるが,N一結合型糖蛋白の糖鎖合成過程の欠陥が疑われることから,多くの研究者の注目を集めている.研究代表者は1992年日本人患者3人を報告すると同時に,この疾患の病態を明らかにすると同時に,佐々木研究所山下との共同研究で,この疾患の欠損機能がアスパラギンN-結合型糖鎖の転位に欠陥があることを報告してきた.その後,この疾患の発見者であるJaekenらは1995年この疾患では,糖鎖合成系に関与するPhosphomannomutase活性の欠損であると報告した.我々は,日本人患者3例の培養線維芽細胞へ,標識マンノース負荷後のマンノース-1-P,マンノース-6-P,標識グルコサミン負荷後のリピッド結合オリゴ糖,標識メバロン酸負荷後のドリコール中間体を解析した.ドリコール合成系およびリピッド結合オリゴ糖の合成は,細胞周期に依存し,S期の直前に極めて高くなることを見いだした.標識マンノースの負荷では,CDG症候群のマンノース-1-P,マンノース-6-Pの形成には正常と明らかな差を認めず,この疾患がJaekenらが言う様なPhosphomannomutaseの欠損によるとは考えられなかった.標識グルコサミン負荷後のリピッド結合オリゴ糖の合成はCDGでどの分画も低く,これ以前の代謝経路に問題があると考えた.標識メバロン酸負荷後のドリコール中間体の解析から,CDG症候群線維芽細胞では,dehydrodolicol/dolicol比がが高く,dehydrodolicol reductionに欠陥があると結論するに至った.本年度の研究結果はA partial deficiency of dehydrodolichol reduction is a cause of Carbohydrate-deficient Glycoprotein syndrome typeIとしてJournal of Biological Chemistry272:6868-6875,1997に掲載される.
|