研究概要 |
本研究の目的は、若年性慢性骨髄白血病(juvenile chronic myelogenous leukemia,JCML)やDown症候群に合併するtransient myeloproliferative disorder,TMDなどに代表される小児期の骨髄増殖性疾患が、細胞の不死化を伴う真の腫瘍性疾患かどうかを検討することにある。前年度では、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia,ALL)10例、骨髄増殖性疾患のJCML2例とTMD1例において、テロメラーゼ活性およびテロメア長の検討を行ったが、急性白血病と骨髄増殖性疾患との有意な鑑別点は得れなかった。そして、正常リンパ球や造血前駆細胞もテロメラーゼ活性を有するため、テロメラーゼ活性と造血器腫瘍との関係についてはさらなる検討が必要と考えられた。 そのため平成9年度は、造血細胞と細胞のエネルギー産生系であるミトコンドリアとの関係を、ミトコンドリアに欠損を有するPearson症候群3症例を対象として検討した。まず、サザン法による解析では、一部の遺伝子に欠損を持つ異常ミトコンドリアと欠損を持たない正常ミトコンドリアとの比率と、症例間または個人内の経時的な血液所見との間に相関が見られ、造血細胞の増殖もしくは細胞死にミトコンドリア機能が関与する可能性が示唆された。 今後は、骨髄増殖性疾患におけるテロメラーゼ活性とミトコンドリアの質的・量的異常を検討していく予定である。
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