研究概要 |
本研究の目的は、若年性慢性骨髄白血病(juvenile chronic myelogenous leukemia, JCML)やDown症候群に合併するtransient myeloproliferative disorder, TMDなどに代表される小児期の骨髄増殖性疾患が、細胞の不死化を伴う真の腫瘍性疾患かどうかを検討することにある。まず、悪性腫瘍である急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia, ALL) 10例では、全例にテロメラーゼ活性を認めた。また、テロメア長は正常範囲とされる8kbから15kbよりは短縮している傾向にあったが有意差は認められなかった。しかし、骨髄増殖性疾患のJCML 2例とTMD 1例において、テロメラーゼ活性は認められたがテロメア長に関しては明らかな短縮や過長などは認められず、急性白血病との有意な鑑別点は得れなかった。さらに、正常リンパ球や造血前駆細胞もテロメラーゼ活性を有することより、テロメラーゼ活性と造血器腫瘍との関係については慎重な検討が必要と考えられた。 次に、造血細胞と細胞のエネルギー産生系であるミトコンドリアとの関係を、ミトコンドリアに欠損を有するPearson症候群において検討した。サザン法による3症例の検討では、異常ミトコンドリアの比率と血液所見に相関が見られ、造血細胞の増殖もしくは細胞死にミトコンドリア機能が関与する可能性が示唆された。 今後は、骨髄増殖性疾患におけるテロメラーゼ活性とミトコンドリアの質的・量的異常を検討し、造血細胞の不死化の機序解明の一助としたい。
|