研究概要 |
成長ホルモンのもつインスリン様血糖降下作用及び抗インスリン作用の分子メカニズムを解析するために,chinese hamster overy(CHO)細胞にGH受容体及び細胞膜表面へのトランスロケーションが感度良く検出できるよう改変したGLUT4を過剰発現させた。この細胞をGH及びインスリンで刺激した後,GLUT4の細胞膜表面へのトランスロケーションを測定すると共に、細胞内シグナル伝達物質としてのJAK2,IRS-1,Akt kinaseの変化を検討した。GHによるGLUT4のトランスロケーションは500ng/mlで最大となり,同じにAkt kinaseの活性化も起こしたが,両者はインスリンと同様にwortmanninにより完全に阻害された。インスリン刺激によるトランスロケーションが2時間不変であり,IRS-1のリン酸化も変動がないのに対し,GH刺激によるトランスロケーションは30分で最大となった後減少し,2時間で未刺激の状態に戻った。JAK2のリン酸化も同様に30分で最大となり,以後減少した。細胞をGHで前処置した後も,インスリンによるAkt kinaseの活性化及びGLUT4のトランスロケーションは影響を受けなかった。以上の結果より,(1)GHとインスリンはGLUT4のトランスロケーションに関して少なくとも部分的に共通の経路をもつこと(2)両者の血糖降下作用の持続時間の差はIRS-1及びJAK2のリン酸化の持続の差によること(3)GHによるインスリン抵抗性は,GLUT4のトランスロケーション阻害以外の機序でおこっていること を明らかにした。
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