骨髄バンクを通じて検索しても、HLAの一致したドナーを見つけることができない患者は多いが、親や兄弟を移植のドナーとすると、90%以上の患者に即座に移植を行うことが可能となる。本研究では骨髄と比して数倍量の造血幹細胞を含む末梢血細胞をドナーから採取し、その後幹細胞のマーカーであるCD34抗原陽性細胞に純化することにより、間接的にT細胞を除いてGVHDと共に生着不全をも防ぎ、移植を安全に行う技術の確立を目指す。 HLAが部分一致正常ドナーにG-CSFを5日間皮下注射し、その後アフェレ-シスを行って採取した細胞から、以下の手順に基づいて抗CD34モノクローナル抗体と免疫磁気ビーズを用いて細胞純化を行った。まず細胞を抗ヒトCD34モノクローナル抗体と4℃で30分間反応させ、余剰抗体を十分に洗浄した後、更にヒツジ抗マウスIgG抗体でコートした免疫磁気ビーズと反応させる。ビーズと結合したCD34陽性細胞を磁石に引き付けて回収し、キモパパイン処理を行うことにより、細胞とビーズを解離する。 ドナーが見つからない予後不良の11名の患者に対して、HLA不一致(3座2名、2座7名、1座2名)の親族からCD34抗原陽性細胞を純化して移植し、移植術後10日目には白血球の、また2週後には血小板数の回復を認めた。対照患者のリスクが極めて高いにもかかわらず重症感染症もなく、急性GVHDの発生も2名に認めたのみで、現在7名が原病の再発なく生存中である。 本研究では末梢血幹細胞を純化することにより、従来の骨髄移植術の手法では移植が不可能で治癒の見込みがまったくなかった患者においても比較的安全に移植を行って治癒せしめうる可能性を示した。。一方、移植片からリンパ球を除くと移植術後の免疫回復が遅れ、重症のウイルス疾患や悪性リンパ腫の発症が増加する。移植片対白血病(GVL)効果も発揮されないために、移植術後の癌再発も増加する。これらの対策も検討が必要である。
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