研究概要 |
白血病、重症再生不良性貧血等の造血幹細胞移植術が適応となる疾患の治療において、HLAの適合度は患者の治療方法選択上極めて重要な因子である。従来の骨髄移植等の造血幹細胞移植術では、HLA非適合ドナーから移植することは重度のGvHDによる合併症死もしくは生着不全による感染症/出血死が避けられなかった。本研究では、HLA一致の骨髄提供ドナーがいない難治性小児癌および重症再生不良性貧血患者に対し、十分な説明と同意の上で家庭内の血縁ドナー(両親、兄弟姉妹)から末梢血幹細胞を採取し、CD34陽性細胞に純化して移植細胞として使用した。 G-CSFによる末梢血幹細胞動員効果は、すでに我々が実施した検討結果から10μg/kg/日と設定し、5日間の皮下投与の後に5日目と6日目にアフェレ-シスを行なって採取した。対象となった3歳〜49歳までのドナーによる検討から、小児ドナーではG-CSF投与後の白血球数増加程度が小さく、頭痛や腰痛などの副作用頻度が低かった。これはG-CSF血中濃度が低いことが理由として考えられた。しかし、単位処理あたりあるいは体重あたりの採取細胞数は成人ドナーと同等であった。この点から判断すると、小児が成人患者のドナーになる場合には10μg/kg/日以上のG-CSF投与が可能であることが推測された。 小児患者13名に実施した純化CD34陽性細胞移植術後の造血機能回復は、自家移植術と同等に迅速で、急性GvHDは2名に認められたのみであった。一方リンパ球の回復は遅く、それに伴う免疫機能回復が遷延することでヘルペスウイルス,サイトメガロウイルスなどの移植後感染症が致死的になる可能性が示唆された。従って、移植後の一定時期にドナーリンパ球輸注を行ない、ウイルス感染症発症の予防と、白血病再発を防止する方法の確立が必要である。 純化末梢血CD34陽性細胞移植術はHLA適合ドナーがいない患者においては有用な方法であるが、安全な治療法として確立するためには移植後のDLT方法の確立が急務である。
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