研究概要 |
1)p53欠失マウス[p53(-)]の末梢血球数、骨髄有核細胞数は野生型対照と比べ差異はなかった。骨髄CFU-S,CFU-GM,BFU-E,CFU-Mk数はいずれも増加傾向が見られたが、統計学的に有意ではなかった。p53(-)では5FU投与後のCFU-GMの回復は急速で、2日後のHPP-CFCは野性型の約4倍に増加していた。2)TGFβの増殖抑制作用はマウスではCFU-MkとHPP-CFCに認められ、p53(-)のCFU-Mkは野性型と同様TGFβにより増殖が抑制されたが、HPP-CFCにはこのTGFβの抑制は部分的にしか発現しなかった。造血前駆細胞のある分画には、TGFβが負の増殖調節因子として機能しており、その抑制シグナル伝達にp53が関与している可能性が示唆された。3)p53(-)の白血球数はin vivo放射線照射後早期には高い回復を示したが、10日目には対照群との間に差はなかった。骨髄細胞にin vitro照射した後のp53(-)のCFU-GMとCFU-Sの生存曲線は、対照に比べフラットで低感受性を示した。end-labeling法による検討で、p53(-)由来脾コロニーでアポトーシスを含むコロニーの比率が増加しており、幹細胞を増殖・分化せずに消滅させる「恒常性維持機構」の存在が示唆され、p53(-)では移植前照射によってアポトーシスを含むコロニーが増加せず、p53欠失により幹細胞がアポトーシスから逸脱した結果と考えられた。4)CFU-GMのinvivo動態をIL-3とGM-CSFを刺激因子としてコロニー形成させた場合で比較をしたところ、6日間BrdUrdラベル後のCFU-GMの殺傷率は両者の間で異なり、IL-3に反応する分画とGM-CSFに反応する分画が同一ではないことが明らかになった。さらにp53(-)CFU-GMの増殖分画はBrdUrd投与開始後早期には大きいが、第5日目には対照と同一になり、p53(-)の造血前駆細胞は野生型よりも短い細胞周期で増殖しているが、最終的に細胞周期に入る前駆細胞の割合は変わらないことを示唆している。
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