研究概要 |
平成8年度は東京小児がん研究グループのプロトコールにて治療した7例について,未治療時末梢血および骨髄,採取した末梢血幹細胞(PBSC)中および自家末梢血幹細胞移植(PBSCT)後の骨髄中の微小残存白血病(MRD)を測定し移植後の臨床経過との関連を検討した. 対象は11q23転座,t(8;21),t(15;17)の急性リンパ性白血病(ALL)2例,急性骨髄性白血病(AML)5例である.方法はRT-PCR法にて行った.7例中6例の末梢血幹細胞中のMRDは陰性であったが,t(8;21)のAMLの1例ではRT-PCR法によるMRDが陽性であった.本例ではPBSC採取時には骨髄所見は形態学的には寛解であり,染色体検査においてもt(8;21)は認めなかった.治療経過との関係はこのt(8;21)の1例が移植後6ヶ月に再発した.他の6例は移植後1年8ヶ月から4年9ヶ月無病生存中である.以上の結果はPBSCTにおける移植PBSC中のMRDの存在が再発につながった可能性が示唆され,MRDの評価は臨床的に有用と考えられた. このような転座型白血病のみを研究の対象としていたのでは検討数が限定されるため,現在すべての急性白血病に普遍的に認められるMRDの指標としてWT-1遺伝子の発現を検討しており,基礎的検討の結果急性白血病30例中28例にWT-1遺伝子の発現を認めており,MRDの指標となる可能性が示唆されている.
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