研究概要 |
血球貧食症候群は、弛張熱の持続、発疹、肝脾腫、漿膜炎などに特徴付けられ、血清フェリチン値が著増することが知られている。他方、「全身型若年性関節リウマチ」(S-JRA)は同様の症状に関節炎が加わり、やはり血清フェリチン値が著増する。しかも典型的な経過の後に「血球貧食像」を呈することがあり、Stephanらの提案に従い「マクロファージ活性化症候群」(macrophage activation syndrome:MAS)と命名される。 これまで「EBウイルス感染症の活動性診断」を検討する過程で、HPS、S-JRA、MASの三者の関連性が密接であることに考え至り、この三者の経過、異同について明らかにすることが病態に至る方法のひとつであるとの結論に達したので、詳細な検討を行った。 この結果、S-JRAに感染などの外的因子が加わることにより異常な高サイトカイン血症が生じ、この病態はHPSに極めて類似したものであることが推定された。すなわちT細胞由来サイトカイン(IL-2,IFN_γ,M-CF)もマクロファージ由来サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF)も著増し、サイトカイン調節が脱制御された状態に至った病態と判断された。すなわち、S-JRAの状態を<phaseI>とすると、この病態に何らかのウイルス感染や病態異常を来す薬剤の使用により<phaseII>に移行することがあり、<phaseII>の病態がこれまで知られているHPSと相同のものであることが判明した。 またこの考え方に沿った治療が奏功することも病態の理解が的確であること事を示唆している。すなわち高サイトカイン血症の改善に血漿交換療法を行い、活性化T細胞の鎮静化にサイクロスポリンを、また活性化マクロファージの鎮静化にリポ化ステロイドを用いることにより、<phaseII>の臨床像は急速に改善し、救命が可能であることが実証された。
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