β-ヘキソースアミニダーゼ・βサブユニット遺伝子は、GM2-ガングリオシドーシスO型の原因遺伝子として知られている。GM2-ガングリオシドーシスO型の患者5名について遺伝子解析を行ない、以下のとおり病因となる遺伝子変異を明らかにするとともに、3'スプライス部位の選択性について究明した。 1、1名の若年型患者で、P417LとK121Rのdouble mutationがホモ接合体で見つかった。1名の乳児型患者で、P417L、K121Rのdouble mutationとP417L、K121R、S255Rのtriple mutationが複合へテロ接合体で見つかり、1名の乳児型患者で、P417L、K121R、S255Rのtriple mutationがホモ接合体で見つかった。 2、2名の乳児型患者で、イントロン10の-17位に点変異が見つかったがエクソン内には変異は見つからなかった。 3、cDNAによる遺伝子発現実験では、上記のdouble mutationは正常の60〜70%の酵素活性が保たれており、triple mutationでは20〜30%の活性であった。(1)における若年型と乳児型の臨床症状の差は、このことに起因すると推測された。 4、(1)のP417Lおよび(2)のイントロン10の点変異は、いずれもイントロン10の3'スプライスに異常を来たすことが患者の培養細胞で認められた。このことはさらに、イントロン10をcDNAに組み込んだmini-geneを用いてCOS細胞で発現させることによって、実験的に証明された。 5、イントロン10-エクソン11の接合部のスプライスは、正常のβサブユニット遺伝子においても不安定であり、これは、このスプライス部位の塩基配列の特殊性に起因していることが、mutagenesisにより塩基配列を変化させての発現実験より明らかにされた。
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