インスリン依存性糖尿病(IDDM)はTリンパ球を中心とした自己免疫により膵β細胞が破壊されるため発症する。IDDM患者の血中には、様々な膵β細胞由来の抗原に対する自己抗体が存在することが知られる。近年その内の分子量65KDの抗原に対する抗体が膵臓β細胞内に存在するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)を認識していることが分かった。この抗体(GAD抗体)はIDDMの発症の数年前より検出されることや、IDDMモデルであるNODマウスにおいては新生児期にGADを投与し免疫学的寛容を誘導すると顕姓糖尿病やラ氏島炎を予防できることから、リンパ球の標的抗原としてのGADの重要性が注目されている。 我々は、これまで以下のような結果を得てきた。 1)HLA抗原を血清学的、DNA解析により分析し、一般集団との比較によりIDDMの疾患感受性のあるHLA抗原について検討した。 2)IDDM発症早期よりの抗GAD抗体、抗インスリン抗体など測定し発症年齢と抗体の陽性率に違いがあることが分かった 3)患者リンパ球を用いて各種膵β細胞由来の抗原に対するリンパ球反応を検討してきた。特にGADに対する反応が有意に見られ、GAD特異Tリンパ球が存在すること、それらGAD特異Tリンパ球はγインターフェロンを分泌する一型ヘルパーT細胞であることがわかった。 4)患者末梢血より、GAD特異Tリンパ球を株化することに成功した。それらはCD4+Tリンパ球とCD8+Tリンパ球の両方を含むことが分かった。
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