第VIII因子cDNAのうちH鎖およびL鎖に相当する約2kbのcDNAをそれぞれ作成し、発現ベクターpNeoIG502に別々に組み込んだ後、CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞に遺伝子導入し、H鎖およびL鎖の各サブユニットを発現させた。発現された第VIII因子サブユニットはそれぞれH鎖A2ドメインを認識するモノクローナル抗体JR8およびL鎖C2ドメインを認識するモノクローナル抗体NMC-VIII/5を用いて10mM EDTA存在下で免疫純化した後、サブユニット特異ELISA(Emzyme-linked immunosorbent assay)により解析した。それによると、L鎖サブユニットは0.02〜0.04U/mlとわずかながら発現が認められたが、H鎖サブユニットの発現は全く認められなかった。そのため遺伝子導入効率がより優れているとおもわれるアデノウイルスベクターに変更しCHO細胞を標的細胞として再度発現実験を行った。その結果、培養上清中のL鎖サブユニットは0.1〜0.2U/mlの発現が認められたが、H鎖サブユニットの発現はほとんど認められなかった。 現在、使用するベクターをレトロウイルスベクターやアデノ関連ウイルスベクターに、標的細胞をヘパトーマ細胞(HepG2)や皮膚線維芽細胞、マウス筋芽細胞に変更し、遺伝子導入効率、導入遺伝子の安定性および遺伝子発現効率について検討中である。
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