研究概要 |
ヒトのリンパ球からダニ抗原(Df)特異IgEを産生する成熟Bリンパ球株を作製した。この細部株を用いて特異IgE産生を増強あるいは抑制するT細胞因子を解析した。得られた細胞株を自己Tリンパ球と組合わせて培養することにより、IgE産生が増強した。T細胞から産生される液性因子や、更に遺伝子組替えにより作製されたリンホカイン(IL-4、IL-10、IL-13 )及び Costimulatory因子(CD40)の刺激によっても増強作用を認めた。更にG-CSFや成長ホルモンなどのT細胞因子とは異なるサイトカインやホルモンが直接作用することによっても同様に増強作用がみとめられ、これらの増強作用は抑制性サイトカイン(IL-12,IFN-gamma)により制御を受けた。このように、特異IgEを産生する成熟Bリンパ球はサイトカイン及びCostimulatory因子により増強あるいは制御されていることが明らかとなった。 更に、寛解患者のT細胞からダニ抗原特異的Tリンパ球クローンを作製した。これらのクローンのサイトカインの分泌パターンはTh2タイプの者が優位であった。Th2タイプの5クローン培養上清はIgE活性を増強したが、1クローンで抑制した。Th0タイプの2クローンではIgE活性は軽度低下したが、ダニ抗原IgEを産生する成熟Bリンパ球株の著名なアポトーシス(細胞死)を誘導した。このように特異IgE産生系を調節する因子が寛解にいたったT細胞中にクローンとして存在することが明らかとなり、疾患寛解の要因になっていることが明らかとなった。また、一方で、Th2タイプの存在は寛解の再燃に関わる因子になっている可能性が示唆された。 他方、この研究に沿って、RSウイルス感染後に発症する気管支喘息における予知因子としてのT細胞の活性、鶏卵アレルギーにおける卵白特異的 IgA 産生系に与えるヘルパー T細胞因子、寛解にいたる時期のサイトカイン産生のインバランスの回復、IgG2 産生系にあたえるT細胞由来サイトカインの作用機構、気管支喘息寛解患者と同じサイトカイン誘導パターンを示す抗アレルギー剤の作用、及び、活動期患児での IL-12 作用選択性の異常の存在がIgE産生の誘因になっていることが明らかにし、本研究の手がかりとした。
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