研究概要 |
本プロジェクトの目的は、ラットの新生仔、あるいは、胎仔の肺から分離した間質細胞と上皮細胞を異なった酸素環境下で培養し、発現量が変動する遺伝子、特に、転写因子を検索することにある。大気環境下(20%O2,5%CO2,75%N2)でほぼconfluentに達したラット胎仔肺線維芽細胞及び肺胞2型細胞を、大気酸素環境あるいは低酸素環境(0-3%O2)でさらに16時間培養しmRNAを分離後、Differential Display(DD)法を用いて、低酸素条件により発現量が増減する遺伝子を検索した。その結果、phosphoglycerate mutase B,prolyl 4-hydroxylase,また、未知の遺伝子(以下B8と呼ぶ)を見いだした。B8は核酸配列から転写因子に特有なタンパク質のドメイン構造の1つであるロイシンジッパー構造を有することが予想された。低酸素暴露後のB8mRNA量の変化は、暴露1-4時間目に対照値より低下し、暴露8-16時間目に増加するという2相性の変化を示した。この変化機構を検討するため、B8遺伝子の転写速度をRUN-ON法を用いて測定した。B8mRNAの転写速度はmRNAの蓄積速度とほぼ同様に変化した。従って、B8遺伝子の発現の調節は主に、転写の段階で行われていると考えられた。また、phosphoglycerate mutase BのmRNA、タンパク質、そして、酵素活性の低酸素暴露後の変化を検討した。いずれの項目とも、低酸素暴露後8-16時間目に対照値の2-3倍増化した。現在、上記遺伝子の発現と、Hipoxia in ducible factorとの関わりを検討中である。
|