研究概要 |
1.Wilson病患者における遺伝子変異の解析と蛋白機能,臨床病型との関連に対する検討Wilson病の原因遺伝子(ATP-7B)の構造解析を行い,変異を有する遺伝子より合成される蛋白の形態・機能と,臨床病型との関連を検討した.各病型の本症患者の肝cDNAあるいはgenomic DNAをPCR法にて増幅し,最終的に塩基配列を決定して変異を同定した.肝型症例においては,2例が2874delCのhomozygoteであり,もう1例が2874delCと2662 delGのcompound heterozygoteであった.神経型・肝神経型の症例はexon5のskippingが1例,そしてArg779Leu変異が2例であり,すべてhomozygoteの症例であった.劇症型を含む肝型Wilson病症例の遺伝子変異は,全例1塩基欠失であった.その結果フレームシフトが生じ,変異より数アミノ酸下流にストップ・コドンが出現する.合成される蛋白はtruncated proteinであり,ほとんどその活性はないと考えられた.これに対し,神経型・肝神経型症例は点突然変異によるアミノ酸置換およびexon skippingであった.これらの遺伝子より産生される蛋白は,ある程度その機能を有すると推測された.これらの結果より,Wilson病蛋白の機能障害の程度により,発症病型が規定されている可能性が示唆された. 2.Wilson病およびMenkes病における細胞内銅輸送蛋白に関する検討 Wilson病原因遺伝子およびMenkes病原因遺伝子(ATP7A)より合成される蛋白の,各疾患患者における構造および機能異常を解析する目的にて,それぞれの蛋白に対する抗体を作製している.ATP-7A・7Bの銅結合部位およびATP-7BにおけるATP結合部位と反応するモノクロナールおよびポリクロナール抗体を,現在作製している.
|