研究概要 |
1.ATP7Aおよび7B蛋白の細胞内銅輸送機構に関する検討 ATP7A・7B蛋白対する抗体を用いてヒト由来の培養細胞におけるATP7A・7B蛋白の細胞内局在を検討した.ATP7A・7B蛋白は,ともに細胞内においてGolgiからendosomeかけての局在,trans-Golgi network(TGN),に認められた.また銅負荷によってその局在はTGNからpost Golgi vesicular compartmentに変化していた.また,その後の銅除去により,再びTGNに戻ることが認められた.通常TGNに存在するATP7A・7B蛋白は,細胞外より入ってきた銅と結合し輸送小胞をつくって銅を輸送するのではないかと推察した. 2.Wilson病症例における遺伝子構造異常と臨床症状・病態との関連に関する検討 臨床病型および経過が明らかなWilson病症例14例(劇症型2例を含む肝型6例,神経型3例,肝神経型1例および発症前型4例)におけるATP7B遺伝子の構造解析を行った.その結果,肝型Wilson病においては1塩基欠失が,特に劇症型など肝障害の強い症例にて認められた.また同様の変異を同胞に劇症型患者を有する発症前型症例にて認めた.これに対し,神経症状を呈した症例においては,missense mutationが多くみられた.1塩基欠失はフレームシフトを生じ,truncated proteinが産生される.蛋白の構造としては著しく障害されており,ほとんどその機能を失っていると推測される.1塩基欠失のhomozygoteおよび1塩基欠失どうしのcompound heterozygoteの症例が全例劇症型および肝障害の強い肝型症例であった事より,フレームシフトを生じる変異,すなわちtruncated proteinの産生は強い肝障害を引き起こす可能性が推測された.
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