研究概要 |
皮膚における免疫反応ではリンパ球等の免疫系の細胞と、ケラチノサイトが様々なサイトカインを産生し、免疫反応に伴って浸潤してくる免疫系細胞に働きかけ炎症反応を制御している。これらの因子の多くは作用する細胞の増殖、生存、機能に関与しているが、細胞のアポトーシスを誘導する因子については知られていない。炎症反応の終息過程はおそらく炎症に関与した細胞の寿命、免疫系細胞の相互作用で起こると考えられるが、炎症の場に存在する固有の細胞もこの終息過程に積極的に関与しているのではないかと考えた。特に皮膚においてはケラチノサイトが何らかの因子を産生し、その因子が浸潤してきた炎症細胞のアポトーシスを誘導し、炎症反応の終息過程に関与しているのではないかと仮説を立てた。末梢T細胞は一般にアポトーシスに抵抗性で、活性化されたときにその感受性が高まると考えられている。そこでまず我々はケラチノサイトの培養上清を用いケラチノサイト由来のT細胞アポトーシス誘導因子の存在を検討し、以下の結果を得た. (1)正常ヒトケラチノサイト及びケラチノサイト細胞株HaCaT細胞の培養上清は共に濃度依存性にCTLL-2T細胞の増殖を抑制した。 (2)FACSを用いて培養上清処理後のCTLL-2の細胞周期を見たところ、この増殖抑制効果はアポトーシスの誘導によるものであった。 (3)CTLL-2をTNFαで処理してもその増殖は抑制されなかったこと、TGF-βはCTLL-2の増殖を抑制したが、抗TGF-β抗体は培養上清によるCTLL-2の増殖抑制効果に影響を与えなかったことから、これら2つのサイトカインの関与は否定的と考えられた。 (4)インドメサシン処理後の培養上清も未処理の場合と同様に増殖を抑制したことから、ケラチノサイト由来のプロスタグランジンの関与は否定的である。 以上よりケラチノサイトが未同定のT細胞のアポトーシス誘導因子を産生することが示唆された。現在その精製,同定を行っている。
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