研究概要 |
本研究の目的は、表皮の角化関連蛋白について、光顕、電顕レベルの免疫組織化学法による局在の詳細な検討、共焦点レーザー顕微鏡による定量的な発現量の解析、フローサイトメトリー法による経時的・定量的発現解析をおこない、角化細胞の終末分化のメカニズムを明らかにし、また角化異常症の原因をさぐることにあった。平成8年度において我々はまず、培養ヒト角化細胞において、培養液のカルシウム濃度を上昇させることにより、角化関連蛋白であるインボルクリンとSPRRの発現を誘導し、それらの局在と微細構造の変化の関連を免疫電顕法、共焦点レーザー顕微鏡により解析し、両者が段階的に発現し、角層の辺縁帯に架橋されることをうらづける知見をえた(Akemi Ishida-Yamamoto,et al.J Invest Dermatol,108:12-16,1997)。また、我々はこれまで全く原因が不明であった、重症の遺伝性角化異常症であるVohwinkel's syndromeの原因がロリクリン遺伝の変異によるものであることを、形態的、および分子遺伝学的研究により証明し、報告した(E.Maestrini,A.Ishida-Yamamoto,et al.Nature Genetics,13:70-77,1996)。 平成9年度は、各種ヒト上皮細胞および培養角化細胞において、ケラトヒアリン顆粒形成、角質辺縁帯形成などの細胞学的変化に、各種角化関連蛋白がどのように関与しているのか、免疫電顕、共焦点レーザー顕微鏡およびフローサイトメトリーにより解析する。さらにVohwinkel's syndromeの他の患者家系における原因検索、他の角化異常症におけるロリクリンの遺伝子異常の探索もおこなう。
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