前年度の研究で確立したヒト毛包組織のin vivoモデルはヒトの単離毛包を移植した系であり、ヒトでは施行不可能なオートラジオグラフィーを使った研究が可能となる。このモデルを使用し、以下の手順でヒト毛包幹細胞の局在を検討した。単離ヒト毛包を移植したSCIDマウスの腹腔内に^3H-thymidine入りのミニポンプを包埋し、2週間後にそれを除去した。その直後、4および8週後の各時期にこれらの移植毛包を採取し、オートラジオグラフィーにより、label retaining細胞の局在を検討した。 投与終了直後ではほとんど全ての毛包上皮細胞がラベルされていたが、毛隆起の外毛根鞘最外層細胞は全くラベルされなかった。4週後では、毛隆起の外毛根鞘最外層以外の層とそれより毛球部側の外毛根鞘最外層にlabel retaining細胞が認められた。8週後には毛隆起部のlabel retaining細胞の数は減少し、外毛根鞘最外層のlabel rataing細胞は4週のそれより毛球部の近くに認められた。以上の所見から、ヒト毛包で最も細胞周期が長い細胞は毛隆起の外毛根鞘最外層の長期間の標識直後でもラベルされない細胞として、次に細胞周期が長い細胞はlabel retaining細胞として観察され、これらの細胞が毛包幹細胞の候補と考えられた。さらに一部の幹細胞は毛球部に移動し、ヒト毛包の非常に長い成長期を維持するのに係わっている可能性が示唆された。
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