創傷治癒におけるケラチノサイトの細胞接着の形成・離開、増殖・分化の機序をプラスミノーゲン・アクチベーター、細胞外マトリックスとの関係から明らかにするために、基礎的研究および条件設定のための実験を中心に施行した。 基礎的研究; 培養ケラチノサイトおよび株化されたヒト有棘細胞癌細胞を培養後、人工的創傷を作成し、その辺縁における細胞の遊走・プラスミノーゲン・アクチベーター、ラミニンの発現を経時的に、蛍光抗体法で確認した。ラミニン5の消失も認められた。天疱癒抗体で刺激したところ、同様の結果を得た。In vivoモデルとしてのコラーゲン・ゲルは、一定の結果を得られたが、各種条件設定は今後さらに、検討を要すると思われる。 臨床的研究; 腫瘍組織においてプラスミノーゲン・アクチベーターは、細胞遊走への関与とともに、転移について重要な役割を演じていると考えられる。臨床的に手術で得られたヒト悪性黒色腫の組織、メラノーマ樹立株をマウスに植えた実験的黒色腫の組織で、プラスミノーゲン・アクチベーターの発現を確認した。また、アポトーシスを誘導した後の組織においては、誘導因子により、アポトーシス細胞の発現に違いを認めたが、細胞接着因子の変化は見いだせなかった。レセプターについては、現在検討中である。 これらのデータから、さらに悪性黒色腫における、プラスミノーゲン・アクチベーター、ラミニンの発現と、臨床事項(転移・浸潤能など)について症例を重ねていきたい。
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