菌状息肉症は皮膚を病変の主座とするT細胞リンフォーマである。本症は紅斑期とよばれる、悪性所見に乏しい状態より、通常は十数年の経過で悪性リンパ腫としての性格を明らかとし、宿主を殺すに至る。本症は確立された実験モデルが存在しないため、表皮親和性の問題を含めて、発症機序の研究、治療モデルの研究は実験的に構築し得なかった。我々の研究目的は、すでに報告した成人T細胞白血病のSCIDマウスモデルを菌状息肉症に応用したものである。SCIDマウスに菌状息肉症患者皮膚よりえた、菌状息肉症細胞を含む細胞群をとりだし、それらをSCIDマウスに静脈注射することにより、モデル作製を試みた。この結果、つぎの事実が明らかとなった。1。SCIDマウスに患者由来のT細胞は生着し、リンパ節、肝臓などにコロニーを作ると同時に、皮膚にもコロニーを作る。2。皮膚に生着した病変部を生検し、病理学的検討を加えた結果、皮膚病変部は皮下組織の単なる悪性細胞の集塊ではなく、表皮親和性を示し、病理学的には菌状息肉症を再現する。3。菌状息肉症の特徴ともいえるポートリエの膿疱は、このモデルで再現される。これらの事実より、SCIDマウスを用いることにより、CTCL、特に菌状息肉症は動物モデルとして再構築可能であると結論した。これらの結果、本研究の目的は完全に達成されたが、よ再現性の高い動物モデルの構築をめざして、本モデルを利用して菌状息肉症細胞のクローン化を試みている。
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