研究概要 |
はじめに:Human T lymphotropic virus type1(HTLV-1)は成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATLL)など様々な疾病の原因ウイルスと看做されている。ATLLは白血球またはリンパ腫の形態をとる悪性リンパ性腫瘍であるが皮膚に親和性が高く、他の皮膚悪性リンパ腫との鑑別が必要となる。さらには皮膚の早期病変ではキャリアとの区別も重要である。 方法と材料:検体としてはATLL10例、非ATLLリンパ腫1例、HTLV-1感染細胞株(MT2)、及びHTLV-1非感染細胞株のパラフィン包埋標本と末梢血単核細胞スメア標本を用いた。PCR in situ hybridization法を用いてHTLV-1taxを増幅、検出することを目的にSK43,SK44をプライマーにSK45をプローブとした。プローブの標識は非放射性物質として、ジゴキシゲニンテイルラベル法を用いた。PCRは30サイクル行った。更に陰性コントロールとしてDNase処理、非ラベルプローブ、HTLV-1と全く関連のないEM-3プローブを用いた。PCRについてはホットスタート法を採用した。 結果及び考按:我々の開発したPCR-ISH方法で充分プロウイルスの増幅ができ、さらに増幅された分子の検出ができることが解った。ATLL10例中9例の皮膚病変(うち3例についてはリンパ節病変をも含む)に陽性所見を得た。更にこれらの所見に加えてエクリン汗腺上皮,血管内皮細胞に陽性所見が得られた。このことは初めての報告であり,ATLLのみならず他のHTLV-1関連疾患の病態の解明の一助になるかと考えた。また末梢血単核細胞については8例の検体を採集しATLL例2例中2例陽性,HTLV-1に関連のない皮膚T-細胞性リンパ腫では陰性であった。現在までのところ予測された結果がでており更に症例を重ねて検討する。
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