はじめに:Human T lymphotropic virus type 1(HTLV-1)は成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATLL)の原因ウイルスと看做されている。ATLLは白血病またはリンパ腫の形態をとる悪性リンパ性腫瘍であるが皮膚に親和性が高く、他の皮膚悪性リンパ腫との鑑別が必要さなる。さらには皮膚の早期病変ではキャリアとの区別も重要である。またHTLV-1はATLLのみならずHAM/TSP、ブドウ膜炎、関節症、感染性皮膚炎、ある種の膠原病等様々な疾病を引き起こすことも報告されている。今回はこのようなHTLV-1関連疾患、特にシェーグレン症候群様症状とHTLV-1感染との関連につき、HTLV-1のエクリン汗腺上皮への感染の有無を検討した。 方法と材料:検体としては、ATLL3例の皮膚病変、キャリア5例の皮膚組織、非感染者7例の皮膚組織と新鮮外科標本を用いた。陽性コントロールとしてHTLV-1感染細胞株を採用した。 外科標本は切除後500単位/mlに調整したEagle培地に4℃で一晩incubateし、その後実体顕微鏡下にエクリン汗腺を単離した。型通りDNAを抽出し、nestedPCR法にて感染の有無を検討した。 結果および考按:エクリン感染上皮におけるHTLV-1感染の検討を行った。その結果ATLL患者3例中2例、キャリア5例中1例に陽性、一方7例の抗体陰性例では全くHTLV-1の感染がリンパ網内系細胞の限らないことを示すものである。このことは、感染経路の多様さの可能性などを含め、ATLLのみならず他のHTLV-1関連疾患の病態解明に重要な知見を提供するものである。
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